1998年10月19日

“パソコン”のこと

〜愛と偏見のPC談〜


  1. 壊れる 〜長持ちする HDD をゲットしよう〜

     
    HDD の故障って、ほとんどが HDD 内部で埃が発生したり、外部から埃が浸入したりして起こります。埃ってのは、1万分の1センチメートル程度の金属粉やオイルミストなどです。
     埃の発生メカニズム、その多くは外部からの衝撃によります。

     HDD は、軽合金やセラミックまたはガラスで作られた円盤に磁性体が蒸着されたプラッタ(ディスク)へ、磁気ヘッドを使ってデジタル信号を磁気極性に変換しデータ記録します。データの記録,再生の高速化を実現するため、プラッタは1分間に3,600回転から、製品によっては10,000回転を超える速さで定速回転させています。
     磁気ヘッドの摩滅を防ぐために、プラッタが回転する際に円盤面に発生する空気の渦を使って、1万分の数センチメートルほどヘッドが浮き上がるようにできています。実は、プラッタ面は極めて平滑につくられてますので、磁気ヘッドと接触すると吸着現象も発生するんです。
     なお、磁気ヘッドが待避位置にある場合、ほとんどの製品では、磁気ヘッドはプラッタ面に接触しています。待避位置にあたるプラッタ面は、平面吸着が起こらないようにテクスチャと呼ばれる粗面処理が施されてます。

     さて、 HDD の磁気ヘッドを支えるアーマチュア(レコードプレーヤーのアームの先のような部分)には弾性があるために、外部から衝撃が加わると、プラッタなどにヘッドがぶつかって埃が発生します。
     ところが、埃が発生したからといって、動作の異常がすぐに起こらないことが多いんです。
     発生した埃は、 HDD 内部を循環します。そして埃は静電気を帯び、磁性体であるヘッドに徐々に集まってきます。ヘッドは微弱な磁気変動を感知する装置です。ヘッドの汚れは、磁気感知能力の低下につながります。
     HDD はデータが記録されている場所を特定するのに、プラッタにサーボブースト信号と呼ばれる制御用信号が記録されていて、これを感知して動いています。サーボブーストは、 HDD の工場で記録されます。従って、現代の HDD では物理フォーマットはあり得ないのです。サーボブーストが消去されれば、 HDD は動けないんですね。
     ヘッドに埃が集まり堆積して磁気感知能力が低下すると、 HDD はサーボブースト信号を読み取れなくなります。あるメーカーの HDD で頻発した「起動時にリトライを繰り返す現象」は、この状況で発生します。
     HDD 内部に埃が発生もしくは浸入してから故障に至るまでには、半年以上かかるみたいです。仮に、ユーザーが衝撃を加えたわけではなくっても、これでは初期不良期間を悠に超えてしまいます。

     では、このような事故をできるだけ回避するにはどうしたらいいでしょうか?それは、工場出荷時からユーザーに届くまでの間、できるだけハンドリングが少なかった HDD を選ぶことでしょうね。
     具体的には、 HDD の工場が出荷に使った箱から出さずに、店頭でもその箱から出して売っているような店で買うことです。
     化粧箱に個別梱包された HDD が売ってますが、これらは流通過程で勝手に箱をデザインして詰めなおしたものです。メーカーは決して HDD を化粧箱に入れません。8〜10台が一箱に詰まっていて、ウレタンの緩衝材に囲まれた段ボール箱を使用しています。
     化粧箱に個別梱包された HDD は、杜撰なハンドリング下に置かれた可能性が高くなります。
     流通過程で梱包作業に駆り出されている人々は、 HDD のハンドリングに関するレクチャーなど受けていない場合がほとんどなんですね。



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  2. PC-9821 の HDD 〜98は特殊なんです〜

     
    NECの PC-9821 は良くできたパソコンですが、 PC/AT (DOS/V) パソコンとは仕様が違うものです。 PC-9821 に内蔵されている HDD は、一般的な IDE 仕様の HDD です。でも、一般の PC/AT のように、 IDE HDD を追加して、2台以上の IDE HDD を制御するようには作られていません。
     「おや?」って思われた方がいらっしゃるかも知れません。内蔵 HDD を追加するキットが、サードパーティや純正品としても用意されていますものね。
     でも、これら内蔵 HDD 追加キットを、賢明なあなたは選ばない方が無難です。

     1つの IDE チャネルでは、マスターとスレーブにそれぞれ設定した2つの IDE 機器を制御することができます。現在の標準的な PC/AT では下表の1と2、つまりプライマリとセカンダリの2つの IDE チャネルが標準で用意されています。それぞれにマスターとスレーブに設定した IDE 機器を接続すれば、都合4つの機器を制御する事が可能です。
     尚、 IDE 機器とは AT 仕様の HDD (普通 IDE HDD と呼びます) と ATAPI 仕様の機器 (代表的なのが CD-ROM Drive) を指します。
     また、下表のサーダリ,フォースのチャンネルは、ハードウェアを増設することによって追加できる場合があります。例えば、サウンドカードの ATAPI CD-ROM Drive コントローラがこれにあたります。
    IDE チャネル I/O Port Address IRQ 備考
    CS0
    (Command Block)
    CS1
    (Control Block)
    1 Primary 01F0h-01F7h 03F6h-03F7h 14 IBM PC/AT MFM Controller が使ってた割り込み
    2 Secondary 0170h-0177h 0376h-0377h 15 Enhance IDE で標準化
    3 Thirdly 01E8h-01EFh 03EEh-03EFh 12 or 11 非標準
    デバイスドライバかアプリケーションが必要
    4 Fourth 0168h-016Fh 036Eh-036Fh 10 or 2/9

     ところが、 PC-9821 にはセカンダリ IDE チャネルがありません。プライマリ IDE チャネルしか、用意されていないのです。
     PC-9821 の CD-ROM Drive は ATAPI 仕様を採用しています。内蔵 HDD は IDE ですから、 PC-9821 のプライマリ IDE チャネルは、 HDD と CD-ROM Drive を制御していることになります。つまり、既に2つの IDE 機器を制御しているのです。

     PC-9821 のマザーボードを見ると、 IDE のコネクタが2つ用意され、それぞれのコネクタからケーブルが延びて、一方は HDD に、もう一方は CD-ROM Drive に接続されています。このレイアウトは、 PC/AT と同じです。しかし、 PC-9821 のマザーボードでは、2つの IDE コネクタの配線がボード上でつながっているのです。
     このため PC-9821 では、 Windows95 などのデバイスマネージャでハードディスクコントローラのプロパティを見ても、プライマリやセカンダリの IDE コントローラが表示されないのです。無いものには、ドライバも要らないわけですね。

     ところが、 PC-9821 では IDE 仕様の HDD を1台追加できるとされています。これは、かなり強引なやり方ですが、 CD-ROM Drive をあたかも無いものとするように細工してあるのです。このため、内蔵の CD-ROM Drive は、本来スレーブの設定で接続すべきところを、マスターの設定として接続しています。
     このような仕様は、当然不具合を誘発させます。この仕様に伴う不具合の多くは、 HDD を追加した時に CD-ROM Drive が見えなくなるというものです。また、 CD-ROM Drive は見えても、 CD-ROM Drive からファイル転送を行うと失敗することが多くなります。
     この問題の対策は、 Windows95 から強化されたマルチタスク機能を抑制してしまうという、パフォーマンスダウンの方法しかありません。具体的には、 \windows\system\iosubsys フォルダにある esdi_506.pdr をアップデートする必要があります。

     では、 HDD を追加したい場合は、どうしたらいいのでしょう?

     最も安価な方法は、元々内蔵されていた HDD は使わずに、大容量の IDE HDD と入れ替えてしまうことです。但し、一部の機種を除き 4.3GB を超える容量を持つ HDD は使えません。従って、 4.3GB 以下の HDD を選びましょう。
     また、残念なことに、内蔵 HDD を交換すると NEC の保証が無くなります。構成部品の変更は、本体の改造行為に当たるからです。従って、この方法は、改造を行う人の判断と自己責任が求められます。
     (容量によって使えない HDD があるという問題は、マイクロソフト社の INT 13h デバイスマスターブートレコードの仕様に起因しています。 PC-9821 では、 PC/AT と仕様が異なるために、この問題は発生しないと言われていますが、確認が取れないため 4.3GB を超える IDE HDD の使用は勧めません。本件に関しては、一般的な内容として、いつか記述したいと思ってます。)

     PCI バスを使っていないのであれば、PCI の SCSI カードと外付けの SCSI HDD を選択するのが、最も安全な方法です。 PC-9821 では、内蔵の IDE チャネルが PC/AT の様に高速ではないため、多くの場合 PCI バス経由の SCSI で増設した SCSI HDD の方が高速でもあります。
     「Aドライブの容量を大きくしたいから、 HDD を増設するんだ」ってことでしょうけど、これは Windows95 や 98 を使用されている方の意見でしょう。
     このような場合、以下の手順で仮想メモリを新しく追加した HDD へ変更します。

    1. <スタート> ボタンをクリックし、[設定] - [コントロール パネル] をクリックします。
    2. [システム] アイコンをダブルクリックします。
    3. [パフォーマンス] タブをクリックし、詳細設定の <仮想メモリ> ボタンをクリックします。
    4. 仮想メモリの [自動設定(推奨)] を [自分で設定する] へチェック ボックスを変更します。
    5. [ハードディスク] ボックスで、新しく追加した HDD を選択します。
      このとき、[最小],[最大] ボックスの値は、自動的に表示された値とします。
    6. <OK> をクリックします。
    7. メッセージに従い Windows 95 を再起動します。

     以上の設定によって、Aドライブはほぼ容量いっぱいまでユーザーが管理できるようになります。但し、一時作業ファイル(テンポラリファイル)は除きます。
     尚、 IDE 分岐ケーブルを使って増設した IDE HDD は、絶対に仮想メモリとしないで下さい。



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