「AMD 5x86-P75 による Intel486 系PCアップグレードの実際」

1996年3月20日
蝉時雨/ semishigure@nifty.com

<はじめに>
 Cx5x86 の登場で、i486 搭載デスクトップパソコンの CPU アップグレードが俄に盛んになった。しかし、“Cx5x86 は動作電圧が 3.45V である”“オプショナルレジスタをソフトウェアでレジストしなければならない”“ライトバック動作させなければその性能を享受出来ない”といった仕様であるにも関わらず、キャッシュの一貫性ロジックを保つためのドライバを必要とし、CPU だけでは如何ともし難く、Cx5x86 を既設の i486 と載せ換えるだけで動作するといったものではなかった。
 ところが、昨年末から Am5x86-P75 という CPU が市場に登場し、i486 搭載パソコンの CPU アップグレードが至極簡単に実施できる可能性が高まっている。
 結論から先に言えば、i486 を搭載する大抵のデスクトップパソコンで、既設の CPU を載せ換えることが出来、iDX2-66 が搭載可能な仕様のものであれば、Am5x86-P75 を利用して CPU アップグレードが可能である可能性が高い。
 本稿は、Am5x86-P75 を利用した i486 搭載デスクトップパソコンの CPU アップグレードの手法を解説することを目的としている。
 但し、CPU の換装はメーカー保証外の行為である。従って、Am5x86-P75 への換装結果とその作業中に発生した諸問題は、換装を行った各ユーザーご本人が負うべきリスクとなることを十分納得の上で、本情報を利用して欲しい。また、本稿が動作を保証するものでも無いことを考慮願いたい。


<Am5x86-P75 とは?>
 Am5x86-P75 は、米国 AMD 社が開発した i486 ピン互換 CPU である。Cx5x86 が内部データバス幅を 64bit とすると共に、分岐予測等 Intel Pentium Processor に勝るとも劣らない新技術を盛り込んだ CPU であったのに対し、Am5x86-P75 は従来の i486 ピン互換 CPU である AmDX4-WB の内部キャッシュを 16Kbyte へ倍増し、4倍クロックモードを設けて 133MHz の動作を可能にした製品に過ぎない。但し、極めて高い動作クロックを実現するために、Intel 社でさえ Pentium-150,166 から初めて採用した 0.35μm コアルールを奢っている。このような製品であるがゆえに、AmDX4 同様に i486 からの換装が容易な仕様となっている。
 尚、P75 と付いているのは、iPentium-75 と同等性能であるといった意味を表している。これは、Pレートと呼ばれる CPU の性能等価レートで、AMD 社,Cyrix 社,SGS-THOMSON 社,IBM MicroElectronics 社の4社が共同開発した CPU 評価手法を用い、その結果を iPentium の性能で表すという指標である。AMD グループとなった NexGen 社の Nx5x86 プロセッサが既に以前から同じ様な表記を用いていたが、Pレートとしては Am5x86-P75 が初めて使われた CPU となるようである。ちなみに、Cyrix 社の iPentium ピン互換 CPU である Cx6x86 シリーズも、Pレート表記を採用している。


<Am5x86-P75 の仕様>
 まず、代表的な i486 ピン互換 CPU で、異なるピン配列となる点を纏めて一覧したい。

PIN
No.
iDX2 i SL enhanced DX4 i SL enhanced WriteBack DX2 AmDX4 NV8T
&
AmDX2
AmDX4 SV8B
&
Am5x86
CxDX2 Cx5x86
A3 TCK TCK TCK TCK TCK NC TCK
A10 NC NC INV NC INV SUSPA# INV
A12 NC NC HITM# NC HITM# SMI# HITM#
A13 NC NC NC NC NC RPLSET1 SUSPA#
A14 TDI TDI TDI TDI TDI NC TDI
B10 SMI# SMI# SMI# NC SMI# NC SMI#
B12 NC NC CACHE# NC CACHE# TEST CACHE#
B13 NC NC WB/WT# CLKMUL WB/WT# WM_RST NC
B14 TMS TMS TMS TMS TMS NC TMS
B16 TDO TDO TDO TDO TDO NC TDO
C10 SRESET SRESET SRESET NC SRESET SMADS# WM_RST
C12 SMIACT# SMIACT# SMIACT# NC SMIACT# RPLSET0 SMADS#
C13 NC NC NC NC NC RPLVAL# NC
G15 STPCLK# STPCLK# STPCLK# NC STPCLK# SUSP# SUSP#
J1 Vcc=5v Vcc5 Vcc=5v NC NC NC NC
R17 NC CLKMUL NC NC CLKMUL HITM# CLKMUL
S4 NC VOLDET NC VOLDET VOLDET INV VOLDET

(iDX4 については、SL enhanced WriteThrough タイプのピン配列である。AmDX4-NV8T は WriteThrough タイプ、AmDX4-SV8B は WriteBack タイプを表している。また、AmDX2 については最終型のピン配列である。)

 上記のように、AmDX4 のライトバックキャッシュタイプ(以下、AmDX4-WB と記述)と全く同じピン配列であり、Intel 社の SL enhanced DX2 の WB タイプとほぼ同じピン配列を持つ。実のところ、Intel 社の DX4 のWB タイプと全く同じでもあるのだが、iDX4 の WB タイプなど市場でお目にかかったことが無いため、一覧には含めていない。
さて、Am5x86-P75 は AmDX4-WB とピン配列こそ同じではあるが、唯一異なる点がある。それは、R17 で与えられるクロック倍率設定の内容である。
 iDX4 も AmDX4-WB と Am5x86 も、クロック倍率はリセット時に R17 がどういった状態であるかで決められる。iDX4 と AmDX4-WB が、R17=Vss(GND) の時にクロック倍率が2倍,R17=Open または Vcc の時にクロック倍率が3倍と設定されるのに対し、Am5x86 は Vss で4倍,Open または Vcc で3倍となる。


 次に、Am5x86-P75 の種類に関して解説する。
 Am5x86-P75 には、パーツナンバーが設定されている。そして、そのパーツナンバー毎に特性が異なっている。パーツナンバーの表記法とその意味を次へ示す。

AMD−x5−133
package type A = PGA
S = SQFP
operating voltage   D = 3.45v
(駆動電圧)   F = 3.3 v
: case temperature     W = 55 ℃
(動作時最高環境温度)     Y = 75 ℃
    Z = 85 ℃



 現在市場に流通している Am5x86-P75 の内、デスクトップパソコンで主に利用する PGA タイプは AMD-x5-133ADW,AMD-x5-133ADY,AMD-x5-133ADZ の3種類である。つまり、動作電圧が 3.45V の製品のみであり、3.3V の製品は流通していない。AMD 社の事情に詳しいルートからの情報に依れば、PGA パッケージの 3.3V タイプは暫く登場する気配が無いそうである。
 尚、上記三種類に対して、AMD 社はそれぞれに冷却方法を指定している。AMD-x5-133ADW では CPU ファンが、AMD-x5-133ADY では放熱フィンが必須となっている。唯一、AMD-x5-133ADZ には冷却方法の要求が無い。


<Am5x86-P75 が搭載可能なデスクトップパソコンの最低条件>
 搭載されている CPU が i486 タイプで、既設の CPU を取り外すことが出来、且つ iDX2-66 または i486 用 ODPR(CPU 置換タイプ ODP)を搭載可能なようにマザーボード上のジャンパ、またはBIOSによる設定が可能なデスクトップパソコン。ちなみに、i486DX-50 は2つの仕様が確認されており、内一方は他の i486 シリーズと著しく異なるピン配列を採用している。そのため、i486DX-50 搭載パソコンでは、iDX2-66 を搭載可能であることがわからない場合には Am5x86-P75 への換装を諦めた方が無難である。
 尚、i486SX 搭載パソコンの ODP ソケットにも搭載できる可能性はあるが、はんだごてを使用した工作が必要であるため、本稿末に簡単な解説を記載するにとどめた。
 また、現在流通している Am5x86-P75 は動作電圧が 3.45V であるため、CPU ソケットと Am5x86-P75 との間に、一般に下駄と呼ばれる CPU レギュレータという部品を挿入する必要がある。そのため、この部品を付加しても問題の無い設置空間が要求される。


<ライトバック動作は諦める>
 Am5x86-P75 では、クロック倍率を4倍とすることでCPU動作クロックを133MHzとし、更に16Kbyteの内部キャッシュを搭載すると共にキャッシュ動作をライトバックとして、iPentium-75 並の性能を発揮出来るようにしている。しかし、ライトバック動作に関しては、マザーボードが AMD 社のライトバックキャッシュ動作に対応した設計がなされていないと、正常なライトバックキャッシュ動作は期待できない。  そこで、誠に残念ではあるが、今回はライトバックキャッシュ動作をさせないものとして、Am5x86-P75 のキャッシュをライトスルー動作で搭載する方法を解説する。


<Am5x86-P75 搭載準備>
 次のパーツを用意する。

  1. Am5x86-P75 (AMD-x5-133ADZ) 並行輸入品であれば \7,800(消費税別)〜
  2. AMD 対応と謳われている CPU レギュレータ(下駄) \3,500(消費税別)〜
  3. ジャンパ1個 \5(消費税別)〜
  4. CPU ファン(取付スペースが無ければ無理に付ける必要なし) \500(消費税別)〜
  5. CPU ファンを Am5x86 と接合するためのシリコングリス \100(消費税別)〜

 まず Am5x86-P75 を入手する必要がある。前述のように、現在三種類の PGA パッケージタイプの Am5x86-P75 が流通している。その中でも、積極的な冷却を要求されていない AMD-x5-133ADZ を選択するのが無難である。一部のパソコンでは、CPU ソケット上に充分な空間が取れない製品も多い。Am5x86-P75 の利用には、殆どの場合下駄の使用が不可欠となるため、CPU ファンや放熱フィンの取り付けスペースを確保できない可能性があるからである。
 また、133MHz を超えるクロックでの動作にチャレンジするのであれば、AMD-x5-133ADW 以外を選択すべきである。筆者は AMD-x5-133ADW を3個体ほど 160MHz 動作実験に用いたが、余程の冷却を施さない限り 3.45v の駆動電圧では安定した動作を望めなかった。ちなみに現在は、AMD-x5-133ADY に CPU ファン(φ50mm 7 blades)による冷却を施して、160MHz にて安定動作させている。

 次に下駄であるが、一般に AMD 対応と謳われているタイプのものを用意する。このタイプの下駄は、iDX4 の2倍,2.5倍,3倍クロック設定、AmDX4-NV8T の2倍,3倍クロック設定、CPU ソケットから供給される 5v の駆動電圧を 3.3v,3.45v に降圧設定可能とするといった、都合3組のジャンパピンを持っている。
 AMD 対応とはどういったものか?前述のピン配列一覧をご参照願いたい。実は AmDX4-NV8T の CLKMUL が B13 にあるため、これに対応した下駄なのである。CLKMUL はクロック倍率を決定する項目であり、AmDX4-NV8T の CLKMUL も iDX4 や AmDX4-WB 同様に、Vcc で2倍,Open または Vcc で3倍となっており、この設定選択が出来るようになっている下駄が AMD 対応と謳われている。ところで、Am5x86-P75 は iDX4 や AmDX4-WB(SV8B) 同様に R17 に設けられているので本来であれば関係が無い。しかし、B13 に対するジャンパを持つことが、Am5x86-P75 を利用するポイントともなる機能なのである。
 前述の一覧にて、Am5x86 の B13 ピンをご覧頂きたい。WB/WT# と記述されている。実は、このピンでキャッシュの動作をライトバックとするか、ライトスルーとするかの設定ができるようになっているのである。前述のように、Am5x86-P75 をライトバックキャッシュさせるには、マザーボードが対応している必要があると記述した。従って、ライトバックをさせない為には、B13 ピンを使ってライトスルーに設定する必要がある。
 Am5x86-P75 は、リセット時に B13 ピンが Open または Vss でライトスルー,Vcc でライトバックとなる。そして、リセット時に B13 ピンが Vcc となる i486 搭載パソコンが意外と多いのである。このため、AMD 対応と謳われている下駄が必要となるのである。
 また、R17 を Vss としなければ4倍クロックにはならない。そのための機能も必要となる。
 この下駄のジャンパ設定機能を簡単に図解する。

Am5x86-P75 下駄 マザーボード上のCPUソケット
JP1 (INTEL CLKMUL)
(CLKMUL) ・1----/// Vss
R17 <--------- ・2-------------------- ------------- R17
Q15 >--------- ・3-------------------- ------------- Q15
(BREQ)
(WB/WT#) JP2 (AMD CLKMUL)
B13 <--------- ・1-------------------- ------------- B13
・2----/// Vss
JP3 (駆動電圧)
・1---- 3.45v ---------- ------------- 電源
電源<--------- ・2                         5v
・3---- 3.3v ----------- ------------- 電源

 上記より、Am5x86-P75 を4倍クロック動作させる場合は、JP1 は端子1−2間に付属のジャンパを設置し、JP2 の1−2間にジャンパ、更に JP3 の1−2間にジャンパを設置する。
 尚、本下駄にはジャンパが2個しか付属していないため、下駄を調達する際に適合するサイズのジャンパを1個、別途調達する必要がある。
 また、Am5x86-P75 は2.5倍クロックをサポートしていない。従って、R17 と Q15 とをジャンパすると壊れることはあっても、2.5倍クロックで動作することは決して無い。JP1 の2−3間をジャンパしてはいけない。

 CPU ファンについては、取付スペースが確保できるのであれば設置したい。これは、AMD-x5-133ADZ でも製品にバラツキがあるようで、中には動作中に結構な発熱をする製品も有るためである。尤も、設置後の状況を鑑みて追加してもいいわけで、その判断もユーザーが行うべきものである。尚、ペルチェ素子が付属する CPU ファンもあるが、高価な割にはそれほどの効果が期待できない場合が多く、しかも電源切断時に熱の逆流現象を起こすというペルチェ素子独特の問題もあるためお薦めしない。


<作業の実際>
 作業対象であるパソコンの電源ケーブルコンセントを外し、CPU を換装出来る状態まで分解する。そして、既設の CPU を取り外す。尚、圧入型の CPU ソケットの場合は、別途 CPU 取り外し治具(\700程度)を用意すること。また、CPU 取り外し治具を CPU ソケットと既設 CPU との間に挿し込む隙間が無い場合は、ナイフ等を接合面にあて、慎重にこじ開けて CPU 取り外し治具が差し込める隙間を作る。CPU ソケットを破損することが無いように、注意して作業を実施いただきたい。
既設の CPU を外し終わったら、マザーボード上のジャンパ等で iDX2-66 または、iDX4 ODPR,iPentium ODPR の設定とする。尚、FMV 等のように外部クロック設定のみをマザーボード上のジャンパで設定し、CPU タイプはBIOSが自動認識するものもある。
 次に、CPU ソケットに下駄を挿入する。また、下駄のジャンパは事前に設定しておいた方が作業が楽である。挿入方向はマザーボード,下駄それぞれの CPU ソケット4角の内の1つにマーキングがに施されているので、この角を合わせるようにして垂直に挿入する。垂直に均一な力で挿入しないと、ピンが折れ曲がったりする恐れがあるので注意されたい。確実に挿入された場合は、マザーボード上の CPU ソケットと下駄との間には隙間が出来ない。
 最後に下駄の CPU ソケットに Am5x86-P75 (AMD-x5-133ADZ) を挿入する。Am5x86-P75 の4角の内の1つが切欠が施されているので、この部分を下駄のマーキングに合わせて垂直に均一な力を加えてゆっくりと挿入して行く。確実に挿入された場合は、Am5x86-P75 と下駄の CPU ソケットとの間に、1mm 程度の隙間が空く。これは、Am5x86-P75 の C3,C15,Q3,Q15 各ピンに、隙間を作るためのメカストッパーが付加されている為である。
 尚、マザーボードは何本かのポスト(支柱)によって、ケースから浮いた状態で固定されている。下駄や CPU を圧入させる際には、マザーボードが撓んで、はんだ部に亀裂等を生じさせる危険も孕んでいる。マザーボードをケースから取り外した状態で作業するのが適当ではあるが、それができないのであれば、マザーボード上の CPU ソケットへ下駄を挿入する前に、下駄の CPU ソケットへ Am5x86-P75 を挿入してからマザーボード上の CPU ソケットへ挿入した方がよいだろう。この時、下駄のピンをウレタン等で保護して、下駄のピンを折り曲げてしまうことが無いように注意願いたい。
 また、圧入型ソケットは、複数回の抜き差しを考慮して設計されていない。基本的には挿入したら外すことは無いという条件の下に設計されているため、幾度も抜き差しを繰り返すとその信頼性は著しく低下する。最悪は接触不良の憂き目に遭うので、手順を間違えて挿し直しを行わなければならないなどといったことにならぬよう、充分注意して作業願いたい。
 最後に、必要に応じて CPU ファンを取り付ける。この時、熱伝導性を高めるために、CPU ファンの CPU 接合面にシリコングリスを薄く均一に塗布しておく。尚、CPU と CPU ファンとの固定は CPU ファン付属の樹脂製固定具を用いるのが一般的だが、下駄の3端子レギュレータが干渉する可能性がある。この場合は、3端子レギュレータの端子部を折り曲げるなりすればよい。但し、端子を切断させてしまったり、半田部の接触不良を誘発させてしまう可能性もあるので注意されたい。また、固定具とシリコングリスを用いず、熱伝導性両面テープで CPU ファンを Am5x86-P75 へ接着してしまっても問題ないと思われる。後は、CPU ファンの配線を結線(普通、HDD や CD-ROM Drive の電源ソケットとパソコンからの電源ケーブルコネクタとの間に、CPU ファンのケーブルに部属するコネクタを挟み込む)して CPU 換装作業は完了する。
 後はパソコンを利用できる状態に組み立てして電源を投入すれば、133MHz のライトスルー動作で Am5x86-P75 は正常に動作すると思われる。尚、画面が全く表示されない場合は、接触不良や部品不良によって Am5x86-P75 が動作していないと考えてほぼ間違いない。


<160MHz 動作の可能性>
 マザーボード上のジャンパなどの設定で外部クロックを 40MHz に設定出来れば、AMD-x5-133ADZ は大抵 160MHz で正常動作するようである。この時、メーカー保証の動作クロックを超えているため、当然発熱も大きくなる。CPU ファンで冷却がなされていれば、殆どの場合、安定した動作が期待できる。また、AMD-x5-133ADY も、多くの個体で 160MHz の安定動作報告がある。こちらも一般的な CPU ファンでの冷却で問題ないようだ。しかし、AMD-x5-133ADW の 160MHz 動作は、一筋縄では安定しない。
 尚、160MHz 動作はメーカー保証外の使用法であり、当然ショップでも動作保証するものではない。また、i486 用のマザーボードや機器の殆どが、外部クロック 33MHz 以下で使用することを前提に設計されている。外部クロックを 40MHz とした場合、特に VL BUS に接続されるビデオアクセラレータの一部の製品では、表示不良や最悪破壊させてしまった事例も報告されている。また、サウンドボードのノイズ出力が多くなったり、IDE HDD CONTROLLER が異常を来たし、スレーブドライブを認識しなくなってしまう等の現象も報告されている。


<Am5x86-P75 搭載の効果>
 2年半ほど前に発売された、日本IBM社製 PS/V 2410 kit NA1 へ Am5x86-P75 (AMD-x5-133ADY) を搭載しての各ベンチマーク結果を以下に示す。オリジナルは iDX2-66 を搭載している。

機器構成一覧

Test base SYSTEM : 日本IBM PS/V 2410 kit NA1
M/B : IBM 66G3602
CPU : AMD-x5-133ADY
RAM : 16MbyteSIMM(60nsec)×4
VIDEO ACCELARETER : canopus PowerWindow9100VLB (ATi Graphics Ultra Pro VLB でも動作確認済み)
SCSI HOST ADAPTER : ADAPTEC AHA-1542CFK
SOFTWARE SCSI DRI. : ASPI4DOS.SYS + ASPIBUF.SYS (EZ-SCSI ver 3.01J)
HDD : IBM DFRSS4F (FAST SCSI2), conner CFP-1060S (FAST SCSI2)
CD-ROM Drive : Texel DM-3024 (SCSI2)
MITSUMI FX440 (ATAPI)
SOUND : MIRO miroSOUND PCM1 pro (MPU401 PORT to YAMAHA WT11)
DATA MODEM : Supra Express 288i p-p (internal type IRQ15:COM3)
MIDI : Roland SC-88 VL (connect to COM2)
DIGITIZER : WACOM UD-0608-R (connect to COM1)
MOUSE : PS/2 BUS MOUSE
SCANNER : MICROTEK ScanMakerIIsp (SCSI1)
PRINTER : EPSON LP-1500 (connect to LPT1)
Operation System : MS-DOS 6.2/V + IBM版日本語 MS-Windows3.1(d) + Win32s(日本語版) + IBM Workplace Shell for Windows3.1 v1.51 + MS-TASKSW16 + Quarterdeck MagnaRAM2


Video mode 1024×768 8bit color (C8)
(*HDD は IDE の Quantum LPS 525AT を使用)

CPU Windsock 3.30 Wintach 1.2
Base clock CPU VIDEO HDD MEMORY O/A W.P. CAD/D S.S. PAINT O/A
33MHz×4
(133MHz)
986 2468 445 221 1009 34.86 183.70 74.39 171.00 115.99
40MHz×4
(160MHz)
1205 2808 472 266 1174 40.80 209.97 83.71 193.84 132.08
40MHz×3
(120MHz)
904 2470 451 266 973 38.04 183.55 80.33 193.84 123.94


以下データは 160MHz 動作のみ取得。機器構成は上記一覧通り

Video mode 1024×768 16bit color (C16)

CPU Windsock 3.30 Wintach 1.2
CPU VIDEO HDD MEMORY O/A W.P. CAD/D S.S. PAINT O/A
1205 2420 473 266 1097 73.52 419.94 103.01 290.61 222.10


スーパーπ 1.1 1.6万桁 : 20 秒

3.2万桁 : 44 秒
6.5万桁 : 1 分 50 秒
13 万桁 : 4 分 13 秒
26 万桁 : 9 分 25 秒
52 万桁 : 20 分 38 秒
104 万桁 : 46 分 29 秒
209 万桁 : 1 時間 43 分 37 秒
419 万桁 : 3 時間 57 分 17 秒
838 万桁 : 9 時間 21 分 31 秒

 尚、上記構成で Am5x86-P75 を延べ 1000時間ほど 160MHz 動作運用しているが、特に問題は発生していない。


<正規輸入品と並行輸入品>
 CPU は日本国外で作られている場合が殆どであるため、AMD 社の日本法人である日本AMD社を通さずに、海外からショップが買い付けて販売することも出来る。こういった製品を並行輸入品と呼び、日本AMD社等の日本法人経由で販売されている製品を正規輸入品と呼ぶ。その違いは、並行輸入品はショップが品質を保証するものであり、正規輸入品はショップと日本法人が品質を保証するものであるとの理解で良いと思う。
 一般には、正規輸入品の方が日本国内で二重に品質が保証されている分、その価格も高い。どちらを選択するかは、ユーザーの選択に任される。
 尚、並行輸入品を購入し、その品質に満足できなかったといって、日本法人に文句を言えないことは当然であることをご認識いただきたい。


<i486SX ODP socket に Am5x86-P75 を挿す>
 i486SX ODP socket に Am5x86-P75 を挿すには、168ピン PGA i486 ピンアウトと 204ピン i486ODP ピンアウトにおける以下のピンの違いを、下駄などを工作することによって吸収する必要がある。
 具体的には、次の二カ所に対して処置を施せば動作可能のようであり、実際に成功例も報告されている。

 ちなみに、Am5x86 では、B14 は TMS(バウンダリスキャンテスト機能) である。但し、A3 が TCK となっており、ここへ入力されるクロックの立ち上がりによって TMS が機能するため、問題が生じた場合は A3 をオープンにする必要があるが、成功事例では問題は出なかったようだ。

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